ルーツや奇跡を辿る美味だけでない食のロマン
鮑が高級食材のトップに君臨する理由
生ではコリコリした歯ごたえと圧倒的な磯の香り。火を通しては繊細で奥の深い旨み。鮑は素材自体が至福の時を、約束してくれる宝物です。日本では縄文時代、弥生時代に於いては貝塚の調査より既に食用とされていたことが伺われます。平安時代から魚介類の中で最も美味しいものとして珍重されてきました。鮑は美味稀少でしたからもっぱら貴族だけが食し、またその体内から美しい真珠を生むことで美の象徴としても人々の憧れを集めていたようです。近年でも高級食材のトップに君臨している鮑は、はるか昔の貴族社会の頃からも高貴な食材として扱いを受けていたのです。
贈り物のシンボル「のし紙」や祝儀袋に必ずついているおなじみの熨斗です。熨斗は鮑の身をリボン状に細長くむいて乾燥させた「ノシアワビ」の略で、もともとは吉事に酒の肴に添えて持参したものとのことです。
これがしだいにノシアワビ自体に清浄とか精進、誠意といった日本人独特のメンタリティがこめられ、やがて吉事・贈り物のシンボルとして位置づけられるようになったそうです。
鮑の魅力はその絶妙な食としての鮑だけでなく、奥深い不思議なエピソードの主役としても趣が感じられます。「磯の鮑の片思い」これは恋にちなんだことわざで、アワビは一枚貝で、貝殻が片方だけであることから、常に相手を思っている状態のことを意味しています。鮑ははアサリやシジミのように二枚貝ではないため、ピッタリと合う貝が無く、相手を常に思う状態であるということに例えた言葉、という意が込められています。このことから万葉人は「片思い・片恋」を鮑になぞらえました。 万葉の感性が、今もおなじみのことわざに生きているのですから 鮑はその美味しさだけでなく、とても奥深くロマンを感じさせてくれる食材ですよね。
当館の鮑料理の中でも私がお勧めしたい逸品がこちらの「鮑ステーキ自家製肝ソース和え」です。それは、冒頭での伝記にも謳われるように鮑という奥深い高級な海鮮素材に私たち料理人の創作の念と職人の技術が合わさった浜の湯の傑作な逸品でもあるからです。そこで、この料理のこだわりについてお伝えしたいと思います。使用する鮑はなるべく同じ大きさのものを使用し身と肝を切り分けます。
鮑の肝は海藻の塊のような部位で磯の風味だけでなく海藻のミネラルがたっぷりと含まれています。こちらの肝を裏ごしして、科学調味料を一切用いず、ゆっくりと火をかけてソースにします。この時に、鮑の肝の風味を無くさないように素早く調理するように細心の注意を払って調理しております。
また、鮑の身の部分はバターのソテーにしております。この調理の際にも気をつけていますのが、火の通し具合です。鮑の身は火を通すと柔らかくなりますが、通しすぎると逆に固くなってしまいます。お客様に絶妙な食感で味わっていただくためには、この火加減がとても重要で、身の真ん中にほどよく火が通るぐらいのタイミングを見極めて調理しなければなりません。
ソースやソテーの調理双方で求められることですが、食感と風味を崩さない調理の”見極め”こそ他にはない、浜の湯ならではの魂があります。これは、今日まで多くの鮑料理をお客様に食していただき調理してきたからこそ無し得る、料理人の感覚によってのみ見極められるのです。
浜の湯名物料理の一つ。最高の食感で鮑を召し上がっていただくため酒蒸しで調理することによりコリコリとした歯ごたえの鮑がやわらかな食感でご堪能いただけます。
濃厚な秘伝のタレと相まって引き締まった金目鯛の身を食した時フワっとしたやわらかさと、とろけるような食感がお口の中に広がり、幸せいっぱいの気持ちで満たしてくれます。うまく魚の身がおとりできない時は、客室係が真心と愛をこめてお取りさせていただきます。
5枚分もの鮑肝を使用するため、1日の提供数が限定される幻の逸品。その希少な肝を贅沢に使ったあんかけご飯は日頃からふんだんに鮑料理を提供している当館ならではのこだわり料理です。 ご朝食オプションにてご用意しております。さらに、ご飯は”釜炊き”の炊きたて!!を特別にご提供いたします。
※ご予約の際、追加オプションにてご予約できます。